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集客マーケティング, 飲食店 読了 約13分

飲食店のグルメサイト掲載料は年いくらか|脱却を判断する損益分岐

グルメサイトの掲載料と予約手数料は、2サイト併用で年間139万円規模になる試算です。公正取引委員会の調査をもとに、コスト構造と、掲載を続けるか見直すかを判断する損益分岐の出し方をまとめました。

グルメサイトの掲載料と予約手数料を合計すると、年間で数十万円〜200万円台になっている飲食店が珍しくありません。月額掲載料3.3万円のプランに、ディナー予約1人あたり200円の手数料が月100人分乗るだけで、月53,000円・年間636,000円。2サイト併用で月10万円を超えれば、それだけで年139万円が固定的に出ていきます(いずれも本記事の試算)。

そして問題は金額の大きさそのものではなく、「予約が増えても、この費用が下がらない」という構造にあります。リピート客がサイト経由で予約するたびに手数料を払い、集客を伸ばそうとすれば上位プランに移って固定費が上がる。この記事では、その構造を数字で分解し、自店が今いくら払っていて、そのうちいくらが削れる余地なのかを、オーナー自身が電卓で計算できる形にまとめます。

売り込みはしません。グルメサイトを続ける判断も、減らす判断も、どちらも合理的です。判断材料になる数字と数え方だけを、中立に並べます。


グルメサイトに、月いくら払っているのか?

掲載料は無料〜月5万円、予約手数料はランチ50〜220円・ディナー200〜770円が相場です。

費用は「掲載料(月額固定)」と「予約手数料(1件・1人ごと)」の二本立てが基本です。ところが多くのオーナーが「掲載料はいくら」までは把握していても、手数料を足した実際の年間総額を言えない状態にあります。掲載料は毎月同じ金額の請求書で目に入りますが、手数料は予約数に応じて変動するため、記憶に残りにくいからです。

掲載料(月額固定)の相場

2026年8月時点で各社・正規代理店が公開している情報をもとにした相場観は、下表のとおりです。プラン改定や個別契約、代理店経由の条件によって変動するため、必ず自店の請求書の実額で確認してください。以下はあくまで「桁を掴むための目安」です。

サイト 掲載料(月額・税込目安) 予約手数料(ランチ/1人) 予約手数料(ディナー/1人)
食べログ 無料プランあり/有料は約1万円〜5万円 約110円〜 約220円〜
ぐるなび 無料プランあり/ライト約1.1万円・ベーシック約3.3万円 約41円〜 約205円〜
ホットペッパーグルメ 掲載料無料プランあり(有料は要問い合わせ) 50円〜 200円〜
ヒトサラ 約1万円〜 非公開 非公開
Retty 非公開(要問い合わせ) 非公開 非公開
一休.comレストラン 成果報酬型(月額固定なしのプランあり) 約220円 約770円

ここで押さえるべきは、「掲載料が安い=総額が安い」ではないという点です。掲載料無料をうたうサイトは、その分を予約手数料で回収する設計になっています。逆に掲載料が高いサイトは手数料が抑えめなこともある。比較すべきは掲載料でも手数料でもなく、両方を足した月間・年間の総額です。

「隠れているのは手数料のほう」という構造

掲載料は前月と同額なので、経費として意識されます。一方、予約手数料は売上が伸びた月ほど大きくなるため、「今月は売上が良かった」という感覚の裏で静かに膨らみます。売上が伸びた月の請求額が上がっていても、それは「成果が出た証拠」に見えてしまい、削減対象として認識されにくいのです。

まずやるべきことは一つ。直近12か月分の請求書を並べて、掲載料と手数料を別々に合計する。それだけで、判断に必要な最初の数字が出ます。

なぜ「予約が増えるほど固定費が増える」と言われるのか?

予約を増やそうとすると上位プランへの移行を促され、掲載料という固定費が上がるためです。

成果報酬のはずが、成果を求めるほど固定費側も膨らむ——という指摘が業界内にあります。これは感情論ではなく公的な調査でも裏付けの一部が確認できます。公正取引委員会が2020年3月に公表した飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査(ポータルサイト運営16社・飲食店1,582店・消費者10,000人が対象)では、次のような結果が報告されています。

調査項目 結果
グルメサイトを利用している飲食店 約63%
グルメサイトの影響力を「非常に大きい」「大きい」と回答した飲食店 約57%
取引先(サイト)の変更が「不可能」「困難」と回答した加盟店 約30%
表示順位を上昇させたいと回答した加盟店 約92%
表示順位等について不満や疑問を感じると回答した加盟店 約32%

出典:公正取引委員会「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査報告書」(令和2年3月)

集客を伸ばすルートが「上位プラン」しかない場合に起きること

約92%の加盟店が表示順位を上げたいと考えている一方で、順位の決定ロジックはサイト側が握っています。同報告書では、掲載サービスに手数料を設けているポータルサイトの多くで、より高額なプランを契約している飲食店のほうが上位に表示される設計になっている旨が指摘されています。

つまり、こういう順番で費用が増えていきます。

段階 月額掲載料 ネット予約(ディナー) 手数料
(220円/人で試算)
月間合計 年間合計
下位プラン 11,000円 40人 8,800円 19,800円 237,600円
中位プランへ移行 33,000円 100人 22,000円 55,000円 660,000円
上位プランへ移行 55,000円 200人 44,000円 99,000円 1,188,000円
2サイト併用 88,000円 300人 66,000円 154,000円 1,848,000円

※すべて本記事の試算です。実際の課金額は契約プラン・時間帯・キャンペーン参加状況によって変わります。

ここで正確に言っておくと、「予約が増えるほどコスト比率が悪化する」わけではありません。上の表で売上比率を計算すると(客単価4,000円と仮定)、下位で約12.4%、上位で約12.4%と、比率自体はほぼ横ばいです。

本当の論点は比率ではなく、その比率が何年経っても下がらないことにあります。通常の広告なら、認知が広がり常連が増えるにつれて売上あたりの広告費は下がっていくはずです。ところがグルメサイトの二重構造では、売上が伸びた分だけ手数料も比例して増えるため、いつまでも売上の約12%前後を払い続ける状態が固定されます。これが「逆構造」と呼ばれるものの実態です。

いちばん大きい漏れは「リピート客への手数料」

見落とされやすいのが、すでに自店を知っている常連客が、習慣でグルメサイト経由の予約ボタンを押しているケースです。本来なら手数料ゼロで来店するはずだった客に対して、毎回手数料を払い続けることになります。

月間ネット予約人数 リピート客の割合(仮定) リピート客の人数 年間で払っている手数料
(220円/人)
100人 20% 20人 52,800円
200人 30% 60人 158,400円
300人 40% 120人 316,800円

※リピート比率は仮定値です。自店の実数は、予約者名の重複を数えれば概算できます。

この部分は、グルメサイトを解約しなくても削れる金額です。次回来店の導線を自店側(電話・自社予約ページ・LINE・公式アカウント)に移すだけで、新規集客力を落とさずにコストだけを下げられます。ここが最も痛みの少ない最初の一手になります。

自店の「本当のコスト」は、どう数えればいいのか?

必要な数字は3つです。年間掲載料、年間予約手数料、サイト経由の年間新規来店人数。これだけで判断できます。

この3つが揃えば、新規客1人あたりの獲得コストが計算できます。

ステップ1:新規客1人あたりの獲得コストを出す

計算式はシンプルです。

(年間掲載料 + 年間予約手数料)÷ サイト経由の年間新規来店人数 = 新規客1人あたりの獲得コスト

ここで分母を「来店人数」ではなく「新規の来店人数」にするのが重要です。リピート客を分母に入れると、獲得コストが実態より安く見えてしまい、判断を誤ります。

ステップ2:獲得コストを「粗利」と比べる

獲得コストは売上と比べても意味がありません。比べる相手は、その客が落とす粗利(売上 − 原価)です。

項目 計算
客単価 4,000円
原価率 30%
1人あたり粗利 4,000 × (1 − 0.30) 2,800円
新規客1人あたり獲得コスト (年間総額)÷(年間新規人数) 475円
粗利に占める獲得コスト 475 ÷ 2,800 約17.0%
初回来店で残る粗利 2,800 − 475 2,325円

※上記は試算例です。原価率・客単価は自店の実数を入れてください。

ステップ3:判断基準を1本に絞る

この計算をした上で見るべきは、「初回来店で残った粗利が、2回目の来店につながっているか」だけです。

グルメサイトが「高い」か「安い」かは、掲載料の額面では決まりません。再来店率で決まります。

掲載をやめたら、売上はどれだけ落ちるのか?

正確な数字は事前には分かりません。ただし落ちるのはサイト経由の新規のみで、リピート客と直接来店は残ります。

つまり「落ちる分」と「落ちない分」は、解約する前に分けて数えられるということです。

落ちる分と、残る分を分けて数える

まず1か月間、来店客を4つに分類して記録してください。POSや予約台帳に一言メモを足すだけで足ります。

分類 掲載をやめた場合 数え方
サイト経由・新規 大きく減る可能性が高い 予約管理画面の新規予約数
サイト経由・リピート 導線を移せば残る 予約者名の重複をカウント
電話・直接予約 影響を受けにくい 予約台帳
飛び込み・徒歩来店 影響を受けにくい 予約なし来店の実数

「サイト経由・新規」の売上構成比が全体の30%を超えているなら、いきなりの解約はリスクが大きい。10%を下回っているなら、掲載料に見合っているかを冷静に見直す価値があります。

いきなり解約せず、段階的に下げる

現実的な進め方は、解約ではなくプランの縮小と、代替導線の並行構築です。

  1. 上位プラン → 下位プランに落として、3か月間の新規来店数の変化を測る
  2. 減った分を、自店の導線(後述)で埋められるかを検証する
  3. 埋められる目処が立ってから、掲載サイト数を減らす

公正取引委員会の調査でも、約30%の加盟店が取引先の変更を「不可能」「困難」と回答しています。依存度が高い状態での急な解約は、経営リスクそのものです。順番を間違えないことが重要です。

グルメサイト以外に、どんな選択肢があるのか?

主な代替はGoogleビジネスプロフィール、自社予約ページ、SNS・LINE、電話の取りこぼし対策の4つです。

いずれも予約1件あたりの手数料が発生しない代わりに、運用の手間か初期費用がかかります。

それぞれの費用構造とトレードオフ

手段 費用構造 強み 弱み
Googleビジネスプロフィール 登録・運用は無料 「エリア+業態」で検索した来店直前の客に届く。予約手数料なし 口コミ対応・投稿更新の運用工数がかかる。順位はコントロールしきれない
自社サイト+自社予約 制作費(初期)+予約システム月額 予約1件あたりの手数料がゼロ。顧客情報が自店に残る そもそも見つけてもらう導線が別途必要
SNS・LINE公式アカウント 無料〜配信数に応じた従量課金 リピート導線として強い。既存客への再来店促進が安価 新規獲得力は弱め。継続的な発信が前提
電話予約の取りこぼし対策 ツール月額 営業中・不在時の不応答を減らし、既存の需要を取り切る 設定と初期の運用調整が必要
グルメサイト 掲載料+予約手数料 新規客への露出量は依然として大きい 売上に比例してコストが増え続ける

見落とされがちな「取りこぼし」という削減余地

新規集客を増やす前に確認すべきなのが、すでに来ようとしている客を取り逃していないかです。ランチのピーク時間帯に鳴った電話に出られなかった件数を、1週間だけ数えてみてください。1日3件の不応答が週6日続けば月72件。そのうち3割が予約だったとすれば、月21件の予約を無料で失っていることになります。

ここは、電話対応をAIが代行する仕組み(営業中や不在時の一次応答・予約受付を自動化するツール)や、席が空いていない場合の自動折り返し予約フォームなど、複数の手段で埋められる領域です。新規客を買う前に、既存の需要を取り切るほうが単価はずっと安く済みます。

公的な統計で自店の位置を確かめる

自店のコスト比率が業界の中でどのあたりにあるのかは、中小企業庁「中小企業実態基本調査」で公開されている宿泊業・飲食サービス業の財務データ(売上高・営業費用の構成)と突き合わせると把握できます。感覚ではなく統計と比べることで、「うちは高いのか、普通なのか」が判断できます。

結局、何から手をつければいいのか?

最初の30日は「数える」だけで十分です。削減や解約の判断は、自店の実数が出てからで遅くありません。

この順番を守ることが、売上を落とさずにコストだけを下げる現実的な方法です。

最初の30日:数える

31〜60日:漏れを止める

61〜90日:プランを見直す

よくある質問

Q. グルメサイトは今すぐ全部解約すべきですか?
A. いいえ。サイト経由の新規客が売上構成比の30%を超えている店で急に解約すると、経営を直撃します。公正取引委員会の調査でも約30%の加盟店が取引先の変更を「不可能」「困難」と回答しています。まず自店の依存度を数え、代替導線を作ってから、プラン縮小 → サイト数削減の順で段階的に進めてください。

Q. 掲載料が無料のプランなら、コストはかからないということですか?
A. かかります。掲載料無料をうたうプランの多くは、予約1人あたりの手数料で回収する設計です。ディナー200円/人であれば、月200人の予約で月40,000円・年間480,000円になります。判断すべきは掲載料の有無ではなく、掲載料と手数料を足した年間総額です。

Q. 記事にある金額は、どこまで信用していいですか?
A. 掲載料・手数料の相場は2026年8月時点で各社および正規代理店が公開している情報をもとにした目安であり、プラン改定・個別契約・代理店条件によって変動します。また試算表の数値はすべて仮定に基づく計算例です。実際の判断は、必ず自店の請求書の実額で行ってください。

Q. Googleビジネスプロフィールだけで、グルメサイトの代わりになりますか?
A. 完全な代替にはなりにくい、というのが実態に近い答えです。Googleビジネスプロフィールは「エリア+業態」で探している来店直前の客に強い一方、グルメサイトは比較検討段階の客への露出量が大きく、役割が異なります。現実的には、新規獲得は複数の経路に分散させ、リピートは手数料のかからない自店の導線に寄せる、という組み合わせが有効です。

まとめ

グルメサイトの費用が経営を圧迫するかどうかは、掲載料の額面では決まりません。払ったお金が2回目の来店につながっているかどうかで決まります。

本記事の要点を再掲します。

まずは請求書を12か月分並べて、掲載料と手数料を別々に足すところから始めてください。その1枚の集計表が、この判断のすべての出発点になります。

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